プレゼンは往々にして非合理なこともある
「プレゼンとは非合理なんだな」
これは私がサポートしたお客様の言葉です。
その方は、化学系の研究者でした。
しかも研究生活50年という超ベテランで重鎮。
「この歳で重要なことを勉強した」とも言っていました。
それというのも研究というものは、常に合理的でなければならない。
全てのエビデンスが完全に客観的に立証されなければ、
研究成果を世の中に発表することはできません。
ですから1から10までの要素を完璧に揃える必要があります。
ですからその方のプレゼンも1から10までを完璧に伝えようとしていました。
それに対して私のアドバイスは、
「聴き手は研究者、専門家ではありませんからそれじゃ伝わりませんよ」
「なぜなら今の話を聴いても、そもそも私が良く分かってませんから」
それでは、どうすれば良いのかということで
1と2は良いのですが、3の説明は無くても素人には十分ですよ。
あと8、9、10も専門家レベルの話なので割愛しましょうとなりました。
研究生活50年の重鎮には、このアレンジが衝撃だったようです。
言ってみればある意味で不完全な説明です。
しかし、それで良しとする、いやむしろその方が分かりやすいと。
何よりプレゼンター自身が俄然説明しやすく感じたそうです。
つまりは、全てを正しく完璧に伝えることがプレゼンの目的ではありません。
聴き手が理解することが最大の目的なのですから、
その聴き手の背景や状況によっては、不完全=非合理もありえるのです。
同様のアドバイスをすることは決して少なくありません。
技術開発、設計製造、分析、医療、金融、コンサルティング分野の方たち
つまり、専門分野において完全=合理的であることが常に求められる人たちです。
もちろん全てのプレゼンが非合理ということではありません。
しかし、専門性そのままに常に合理的な伝え方をすれば良いわけでもありません。
大事なことは、とにかく聴き手をよく見て、聴き手のことを想像すること
そして、非合理な伝え方もありえる、むしろその方が良い事もあるという
余裕と柔軟性を持つことが、結果的に分かりやすいプレゼンにつながるのです。