ゼネコン建設業のための受注を勝ち取るプロポーザルプレゼンテーション

建設業のプレゼンは規模が大きい

プレゼンイメージ

建設会社にとってプレゼンテーションの質は極めて重要です。依頼主から提示された要求仕様を盛り込みながら、競合他社に打ち勝つべく自社の強みを分かりやすく伝えなければなりません。
そして、何と言っても建設業のプロポーザルは1案件の規模がとにかく大きいことに特徴があります。
これまで私は、複数のゼネコンさんでプレゼンテーションの研修やコンサルティングを行ってきましたが、100億、200億、300億と見積金額の大きさに驚かされました。
それだけ大きな仕事が取れるか取れないか、わずか30~40分のプレゼンテーションで決まるわけですから、その重要度は極めて大きなものとなります。

建設業のプレゼンは情報量が多い

ビルイメージ

そこで、建設業のプレゼンの特徴をいくつか挙げてみたいと思います。
まずは、伝えるべき情報量が非常に多いという点があります。
例えば、プロジェクトチームの担当者と経歴、全体工程、完成予想図と美観、内装や設備、施工方法、耐震等の安全性に関する技術力、近隣住民への配慮等々、多岐にわたります。数百億円規模の建物を建てることになるわけですから、多くの人や機械、技術力が必要になるので当然と言えます。
次に、スライド資料には画像や図解を多用するという点です。実際にどのような建物になるのか、全体の外観からエントランス、各フロアのスペース、階段、トイレに至るまで目で見てもらわなければなりませんから多くのイラスト画像を用いることになります。
また、安全性を担保する技術力や構造上のポイントについても多くの図解を用いて伝えることになります。それに伴い、自然とスライドの枚数も多くなる傾向があり、30枚、50枚、最高ではなんと80枚というプレゼンに出くわしたこともあります。

聴き手は建設の専門家ではない

建設現場イメージ

さて、このように専門性が高く、膨大な情報を伝えなければならない建設業のプレゼンですが、それに反して依頼主は技術的な専門知識を持たない素人であることがポイントであり、十分な配慮が必要となります。
病院なら医療従事者、化学研究所なら化学の研究者、学校なら学校法人の関係者や教職員です。そうした聴き手にいかに分かりやすく伝えるかが重要なカギを握っていると言えます。したがって、専門性の高さそのままに専門用語を使って技術的レベルの高さを並べ立てたところで、聴き手の理解はなかなか追いつかないというのが現実です。
例えば、身近な自動車を例に考えてみましょう。自動車に関する技術的な専門知識を持たない人が車を買おうとしています。その人にエンジン、ブレーキ、サスペンションの仕組みの話やコンピューターによる電子制御の話を熱く語ったところで、ほとんど理解できず、購入の決断には至らないことが予想されます。
そうした実情を踏まえて、いかにその車が他の車に比べて安全性、快適性、経済性について優れているかを伝えなければならないのです。

思い切ったコンセプトを打ち出す重要性

プレゼンイメージ

では具体的にどのようなプレゼンテーションを展開すればよいのでしょう。
ポイントは、素人でも理解できる分かりやすい言葉でコンセプトを打ち出すことです。その際に、あれも良いこれも良いと考えを広げ過ぎずに、思い切って絞り込む勇気も必要になります。
例えば「今回のご提案の中で私たちが打ち出すコンセプト、それは将来を見据えた拡張性です」というように、まさにプレゼンの中心に太い柱を立てるようにします。
当然ですが、このコンセプトのベクトルは依頼主の意向と合致していなければならないことは言うまでもありません。そして、詳しく展開される外観や技術の話が、全て「将来の拡張性」に沿っていれば専門性を持たない素人でも理解しやすくなってくるのです。専門家からすると「そんなもんか?」と疑問を抱くかもしれませんが、「素人はそんなもんである」ことを理解できる力が「本当の専門性」と言えるのです。

当たり前の言葉では競合に勝てない

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そして最後に、当たり前の言葉を使い過ぎないという点も大切です。
例えば「安心」「安全」「迅速」「効率的」といった表現です。
これは依頼主からすれば当然の要求事項であり、安心で安全で迅速で効率的な仕事をしてくれないと困ってしまいます。
不安で危険で緩慢で非効率的な提案にGOサインなど出すはずがありません。しかも、競合他社も「安心」「安全」「迅速」「効率的」を実現するための提案をするはずですから、何の差別化にもならない状況に陥ってしまいます。
私はこれまで、スライド上にこうした当たり前の言葉ばかりがいくつも並べられ、プレゼンターが連呼しているプレゼン発表に何度も出くわしてきました。
「安心」「安全」「迅速」「効率的」といった言葉は、聴き手である依頼主がプレゼンを聴いた後に抱く感想であり、提案側が自ら用いるのはナンセンスと言わざるを得ません。聴き手にそう感じ取ってもらい、そう言わせるための根拠を提案しなければならないのです。

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